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水痘(みずぼうそう)と帯状疱疹

 水痘ワクチンが平成26年10月から1,2歳児に定期接種となりました。

 水痘は水痘帯状疱疹ウイルスの感染によって発病する伝染病です。このウイルスはヒトとサル以外の動物ではほとんど増殖しません。わずかにモルモットの胎児細胞で増殖します。また温度に不安定でウイルスとしての活性が失われやすいこともありワクチンの開発は相当困難だったようです。

水痘(みずぼうそう)

   1.水痘の概略
1) 

空気感染で感染力は非常に強く、すれ違っただけでも10人に1人は感染するとか、兄弟で誰かがかかると、免疫を持たない兄弟は9割以上の確率で発病するといわれます。
2)

潜伏期間は約2週間ですが、時には10日位で発症することもあり、あるいはもらったウイルスが少ないと発病までに20日位かかることもあります。
3) 

水痘の症状は38度前後の熱とともに数百個の発疹が次々と出現します。個人差は大きく、発疹は十数個から数千まで、発熱は無熱から40度を超える高熱まであります。
4) 


最初に発赤、ついで水疱形成、その後「かさふた(痂疲)」が形成されます。次々と新しい発赤を生じてくるため3日後ごろには発赤、水疱、「かさふた」が同時に見られるようになります。 ほぼ1週間ですべてが「かさふた」になり、感染力が消失します
5)


水痘の合併症では、皮膚の引っかき傷から細菌感染をおこしたり、水痘ウイルスによるウイルス性肺炎や、あるいは神経系では急性小脳失調症や水痘脳炎を起こしたりすることもあります。また血小板減少症が起こることもあります。
6) 

水痘が回復したあとにウイルスは神経を通って神経組織に潜伏し、加齢などさまざまな原因で神経組織から皮膚へと逆のコースをたどって出てきます。これが帯状疱疹です。

  2.水痘は軽い病気?

 水痘ワクチンが定期接種となる以前は毎年80~100万人が発症していました。そのうち重症となって毎年4,000人が入院していました。子どもでは熱性けいれん、肝機能異常、皮膚の細菌感染症、気管支炎や肺炎などが入院の原因ですが、一方、成人では水痘そのものが重症となっての入院です。また生まれてすぐの新生児では重症になりやすく早急に手を打たないと死亡します。今後、定期接種で大半の子どもが接種するようになりますから、水痘による入院や死亡、それに将来帯状疱疹になる人も激減するでしょう。 

    3.水痘の流行時期
 水痘は毎年11月ごろから流行が始まり、春先にかけ増加していきますが、7月ごろから減少、9月ごろが最低レベルになります。また帯状疱疹では水痘と逆に夏が多く、冬は少なくなる傾向が見られます。

水痘の定点当たり報告数

     4.妊婦の水痘
 妊婦は胎児を抱えており、胎児を守る(胎児を異物として除外しない)ため免疫能がやや弱くなっています。そのため妊婦が水痘にかかると、重症化しやすく、また胎児には先天性水痘症候群といわれる障害をもった子が生まれることがあります。
 分娩の5日前から分娩2日後までに母親が水痘にかかると、新生児には母親からもらうはずの免疫がなく、重症水痘となり、死亡率30%にもなります。

    5.水痘ワクチン

 健常小児では1回の接種で95%に免疫ができます。12歳以上では理由ははっきりしませんが、免疫ができにくいことがわかっています。1回接種だけでは集団での流行を阻止できないため、2回接種が基本となります。日本のように水痘にかかる子が多い国では、2回目は1回目から3-6ヶ月後がお勧めです。また水痘の流行がほとんど無くなった国では2回目を数年後に接種することもあります。
 
   6.水痘ワクチンの接種対象
1)
定期接種では1歳と2歳
2) 
 
定期接種以外ではネフローゼ症候群、喘息でステロイド治療中、ハイリスク患者(急性白血病やその他の悪性腫瘍、免疫不全など)などに免疫の状態をみて接種します。
3)

 

緊急時:たとえばハイリスク者が水痘患者と接触したとき、72時間以内に接種すると発病を予防したり、軽症化したりすることができます。
4)

 

成人で水痘の免疫がない人(特に医療関係者)、水痘ウイルスに対する免疫が低下した高齢者、妊娠を希望する女性で免疫のない人なども接種対象になります。
 
   7.水痘ワクチンの副反応
1)
急性血小板減少性紫斑病(100万人に1人程度)
2)
発疹、じんましん、皮膚の紅班、かゆみ、発熱など(0.1%未満)
 
   8.水痘の治療
1)
 抗ウイルス剤で軽症化ができます
2)
熱にはアセトアミノフェン(アンヒバ坐剤など)が使用されます。
3)
かゆみには抗ヒスタミン剤内服や発疹部位にかゆみ止め軟膏などで対応します。
4)
皮膚の細菌感染症にはペニシリンなど抗菌剤の内服をします。
 
   9.解熱剤使用の注意
 
1)
アセトアミノフェンを頓用(必要時のみ使用)します。
2)
アスピリンは使用しません(ライ症候群の発症リスクを高める)
3)

 

非ステロイド系消炎鎮痛剤は避けます(重症A群溶連菌感染症の発症リスクを高めるため)。
 
*ライ症候群とは「インフルエンザや水痘などのウイルス感染後、特にアスピリンを服用している小児に、急性脳症、肝臓障害を引き起こし、生命にもかかわる原因不明で稀な病気」とされ、1980年ごろ子どもではアスピリン(類似薬も)を使用しないようにと勧告が出されました。欧米ではこの当時は薬局で処方箋なしで簡単に買える薬であり、受診なしに相当乱用されていました。アスピリンを安易に服用しないよう勧告が出されてから、ライ症候群はほぼ無くなりました。幸い日本では服用が少なかったため被害はほとんどみられませんでした。
 
  10. 成人の水痘
1)
水痘肺炎が16~50%に見られます。
2)
喫煙者では肺炎になるリスクが15倍も上昇します。
 
*水痘肺炎は発疹出現後1週間以内に発熱・咳・多呼吸・呼吸困難などが急速に進行し、死亡することもあります。
 
  11.軽い水痘(修飾水痘)
1) 
水痘ワクチン接種6週間以降に水痘流行に巻き込まれ、濃厚感染を受けると20-30%が軽症水痘を発症します。
2)
56%が50個未満のわずかな発疹しかみられません。
3)
 かゆみは少なく
4)
水疱を形成しません。
5)
発熱もなく
6)
経過が短いのが普通です。
7)
しかし、感染力は弱いものの、集団内での感染源となり、流行を長引かせます。
8)

このような軽症水痘では診断が困難なこともあり、診断するには急性期と回復期の2回の血液検査をします

軽い水痘(修飾水痘)

   12.免疫不全での重症水痘
1)
免疫不全の人が水痘にかかった場合は、重症水痘になります。
2)
発疹や発熱が2週間以上にわたって持続します。
3)
原因不明の激しい腹痛、背中の痛み、腰痛などを訴えることがあります。
4)
水疱は大きく、水疱中に出血することもあります。
5) 
手掌や足底など皮膚の厚く硬い部位にも水疱を生じ、「かさふた」がなかなかできません。
6)
脳炎や肺炎をおこすことがあります。
7)
肝機能異常や多臓器不全になって全身が消耗します。
 
  13.帯状疱疹
1)
日本では年間約60万人が罹患します。
2)
帯状疱疹の再発は1~5%です。
3)
発症数日前からの疼痛が70-80%に見られます。(前駆痛)
4)

 

発疹のない人、前駆痛のみ、重症など。また極端な免疫低下状態では病変の形成がないこともあります。
5)
顔面に出た場合は合併症に注意します。
6)
小児でも発症することがありますが、50代から70代にかけてピークがあります。
帯状疱疹
水痘と異なり神経の走行に沿って出現します。
発疹の出現
帯状疱疹の患者数
帯状疱疹の患者数(人口1000人当たり年間患者数):加齢とともに増加します。
Chickenpox:水痘 latent phase:潜伏期 Herpes zoster:帯状疱疹 
 
    14.帯状疱疹と方言
帯状疱疹には各地で様々な方言があります。ネットで調べると
 東北・北関東地方では 「つづらご」「はくじゃ」
 南関東では 「ひっつらご」
 中部地方では 「つづらご」「おびくさ」
 関西地方では 「胴まき」「たすき」「おび」
 中国四国地方では 「胴まき」「けさ」「けさがけ」「けさよう」「あわよう」
 九州地方では「胴巻き」「たづ」「へびたん」「たん」「たい」
 沖縄では 「タンガサ」
などがヒットします。以前見た本には30を超える方言があり地方によっては数種類以上もの方言が混在しているのもあるようです。

     15.帯状疱疹と神経痛
帯状疱疹と神経痛
 帯状疱疹では発疹が出る前から出る前駆痛、発疹が出てからしばらく続く急性帯状疱疹痛、更には発疹が出てから長期にわたり続く帯状疱疹後神経痛があります。帯状疱疹後神経痛は3ヶ月以上疼痛が続き、帯状疱疹患者の1-2割に出ます。年齢とともに増え、50歳未満では2%、50歳以上では20%、80歳以上では35%に見られることがあります。この帯状疱疹後神経痛は年齢、発疹時の疼痛の強さ、発疹の重症度、前駆痛の強さなどが疼痛の強さや期間などと関係します。

    16.帯状疱疹と三叉神経痛
 「三叉神経痛」は顔面の知覚神経から発信される強い痛みが特徴です。三叉神経は12対ある脳神経の5番目の神経で、眼神経、上顎神経、下顎神経の三神経に分かれることから名前がついています。この痛みは、耳・目・唇・鼻・頭皮・額・頬・歯・顎と顔の側面などに感じます。疼痛は治療が困難なことも多く、薬物療法・神経ブロック・手術療法などで対応します。血管が動脈硬化などによって膨張し、三叉神経を圧迫することで痛みを引き起こすとこともありますが、帯状疱疹の場合はウイルスにより神経細胞が破壊されたり障害を受けたりした結果の疼痛です。神経細胞は修復が困難なため一度破壊されると疼痛が長期間にわたり持続します。
三叉神経痛
右の眼神経の走行に沿って病変が見られます。
 
    17.帯状疱疹の治療
 帯状疱疹の治療は主に疼痛対策が中心になります。抗ウイルス剤の内服や注射をすることで帯状疱疹ウイルスの増殖をできる限り抑えます。特に顔面の皮疹、広範囲に出た皮疹、疼痛の強い皮疹などでは入院加療が必要になる場合が多くなります。
 
    18.まれな帯状疱疹
1)

 

複発性帯状疱疹:体の中心部(胸部、腹部、背中など)や三叉神経の第1枝(眼神経)などの複数の箇所に発疹が出ます。
2)

 

 

汎発性帯状疱疹:多くの帯状疱疹は神経の走行に沿って帯状にまとまって発疹がでますが、時には原発部位から離れた場所に水痘のように散在して多数の発疹が見られるでるものです。
3)

 

 

複発性や汎発性は重症の場合が多く、発疹が大きく、血液を含んだ発疹もみられます。合併症を伴ったり、免疫不全者に見られたりしますので、入院加療の対象となります。
 
     19.帯状疱疹の主な合併症
1)
腹筋麻痺:便秘、腹部膨隆
2)

 

三叉神経第2枝(上顎神経)・第3枝(下顎神経)から第3頸髄神経領域の帯状疱疹:同側の顔面神経麻痺、味覚障害、内耳障害
3)
仙骨神経領域:尿閉や便秘
4)
三叉神経第1枝(眼神経):脳炎、脳神経麻痺、四肢の単麻痺、尿閉
 
    20.帯状疱疹予防に水痘ワクチンを使用
 米国にて4年間の大規模臨床研究により、水痘ワクチンが帯状疱疹の発症を抑制することがわかりました。60歳以上の成人37,200名にワクチンとプラセボ(偽ワクチン)を接種したところ、帯状疱疹の発症は51.3%減少し、帯状疱疹後神経痛の発症率は66.5%減少しました。
 2006年5月25日に帯状疱疹予防ワクチンとして、メルク社の帯状疱疹ワクチンが認可され同年10月25日には全ての60歳以上に接種が勧奨されました。
 
  米国で帯状疱疹ワクチンが承認されるまでの経緯
1995年3月17日、水痘ワクチン(Varivax)が承認されました。(米国メルク社)
  同年米国ではすべての子どもに水痘ワクチンを接種開始
1998年9月~2004年4月、米国にて水痘ワクチンの帯状疱疹予防効果を確認する4万人規模の大規模治験実施
2005年9月6日 麻しん・おたふくかぜ・風しん・水痘4種混合ワクチン(MMRV、
  ProQuad) が承認されました(米国メルク社)
2006年5月25日 帯状疱疹ワクチン(Zostavax)が 承認されました(米国メルク社)
2006年10月25日、米国予防接種諮問委員会(ACIP)が60歳以上の全てに帯状疱疹ワクチン接種を勧奨しています。
現在では、50歳以上に帯状疱疹ワクチンが勧奨されています。
 
     21.日本の水痘ワクチンで帯状疱疹予防
 米国では水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンとは元は同じですが、帯状疱疹ワクチンは水痘ワクチンより10倍以上濃厚に作られています。日本の水痘ワクチンは米国の帯状疱疹ワクチンに匹敵する濃度があります。従って、日本の水痘ワクチンはそのまま帯状疱疹ワクチンとしての役割も果たすことができます。50歳以上で帯状疱疹を予防する目的での利用が今後普及していくものと思われます。

2014年12月
2016年3月更新

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